コレステロールを下げるには
コレステロールは細胞膜や各種ホルモン、胆汁酸を作る材料となるなど、体にとって大切な役割のあるものです。コレステロールには善玉コレステロール(HDLコレステロール)と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)とがあり、それぞれ大切な役割があります。
なかでもLDLコレステロールは肝臓で合成されたコレステロールを全身に運ぶ役割を担っています。
しかし、LDLコレステロールがうまく血管を流れて行かずに血液中に増えてしまいますと、血管壁に溜まって動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞など重大な病気につながる可能性があります。
コレステロールを下げるには具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?
Contents
コレステロールが高い原因は?
そもそもコレステロールが高い原因はなんなのでしょうか。
食事
LDLコレステロール高値の原因について、食事中の飽和脂肪酸の摂りすぎや食事中のコレステロールがあげられます。
飽和脂肪酸が多く含まれる食品
肉の脂身、鶏肉の皮、バターやラード、生クリーム、洋菓子など
コレステロールが高い食品(コレステロールを上げる食品)
卵の黄身、魚卵、臓物類、動物性のレバー
ただし、コレステロールは食べ物からだけでなく、肝臓など体内で合成されています。食事からの摂取は20%程度なのに対し、体内で合成されるコレステロールはなんと80%にもなるのです。
厚生労働省でも「日本人の食事摂取基準」2015年版からはそれまで上限を定めていた食事からのコレステロールの目標量を撤廃しています。
しかし、それは食事に注意しなくていい、ということではありません。
摂取したコレステロールが血中コレステロール値に与える影響には個人差があることから一概に目標値を定められないからであって、どれだけとっても大丈夫ということではありませんから注意しましょう。
また、脂質異常症の診断基準では、空腹時の血液中で
LDLコレステロール値…140mg/dl以上
HDLコレステロール値…40mg/dl未満
中性脂肪値…150mg/dl以上
の場合、脂質異常症と診断されます。
血液中の中性脂肪が増加しますとHDLコレステロールの減少を招きますし、中性脂肪も高値にならないよう、食事には気をつける必要があるのです。
肥満
肥満は中性脂肪がたくさん蓄積されている状態です。脂肪が増えると血糖値を下げるインスリン機能が低下して中性脂肪がさらに増加、結果、コレステロールが高くなります。
お酒の飲み過ぎ
適量のお酒はHDL(善玉)コレステロールを増やしてLDL(悪玉)コレステロールを減らす効果があると言われています。しかし、多量のお酒は中性脂肪を増加させてHDLコレステロールが減少、逆にLDLコレステロール値を上げる原因となってしまいます。
ニコチンの過剰摂取
タバコを吸うと血液中のLDLコレステロールが増加・HDLコレステロールが減少することがわかっています。
ストレス
ストレスは体内ホルモンに影響して血中脂肪をあげてしまいます。
ストレスを受けることで自律神経の働きが乱れますと、副腎皮質ホルモンが分泌されます。副腎皮質ホルモンには血液中の遊離脂肪酸の量を増やす働きがありますが、この副腎皮質ホルモンの材料となっているのがコレステロールです。
ストレスが増加しますと副腎皮質ホルモンの材料となるコレステロールの需要もますます高くなり、結果、血液中のLDLコレステロールを増やしてしまいます。
遺伝
家族性高コレステロール血症といい、生まれつき、遺伝によってLDLコレステロールが高くなる病気があります。
更年期の女性ホルモン分泌低下
女性ホルモンであるエストロゲンには血中のLDLコレステロールを肝臓に取り込む「受容体」を増やす働きがあります。
女性は更年期になりますとエストロゲンの分泌が減少しますが、そうなりますとこの受容体も減少してしまいます。そのため、血中のLDLコレステロールが増えてしまうのです。
コレステロールを下げるには?
悪玉コレステロールを下げる食品一覧
野菜 | 野菜類全般、きのこ類、キャベツ、ブロッコリー、トマト、たまねぎなど |
魚 | 青魚(アジ、イワシ、サンマ、マグロ、ブリなど) |
海藻 | 昆布、わかめ、ひじき、もずくなど |
大豆製品 | 大豆、納豆、豆腐など |
穀類 | 玄米、七分つき米、麦飯、雑穀など |
ナッツ類 | アーモンド、くるみ、ピーナッツ、ピスタチオ、ゴマなど |
果物 | りんご、みかん、オレンジ、グレープフルーツなど |
調味料 | オリーブオイル、米油、えごま油、酢など |
乳製品 | ヨーグルト |
DHA、EPA
青魚(アジ、イワシ、サンマ、マグロ、ブリなど)にはEPA、DHAが多く含まれています。厚生労働省でもコレステロールを抑えるためにEPA/DHAを多く含む食事を推奨しています。
※1 青魚に含まれるEPA、DHAは溶けやすく熱に弱い性質を持っているため、効率よく摂取するためにはお刺身が最もおすすめです。また、煮込み料理などの調理方法で煮汁まで食べることをおすすめします。
焼き魚はグリルに油が落ちてしまうため、もしも焼き魚にする場合にはフライパンやアルミホイルなどを利用して出てくる油ごと摂取できるようにしましょう。
食物繊維
食物繊維というと便秘解消などのイメージがありますが、コレステロール対策としても有効な成分です。厚生労働省でもLDLコレステロール対策として「食物繊維の多い食品」をあげています。
※2 食物繊維には水溶性と不溶性とがありますが、とくに海藻類やこんにゃく、くだもの、野菜、豆類などに含まれる水溶性食物繊維にはコレステロールを吸着して排出するはたらきがあります。
また精製度の高い穀類よりも、玄米や七分つき米など未精製穀類のほうが食物繊維が多く含まれていますので、主食として取り入れるなら未精製穀類がおすすめです。
SMCS
野菜は全般的に摂る必要がありますが、なかでもブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科野菜に含まれる天然アミノ酸の一種、SMCSという成分にはコレステロールの低下作用があると確認されたようで、トクホ飲料にもなっています。
大豆製品
大豆には大豆たんぱくや大豆イソフラボン、大豆レシチン、大豆サポニンなどコレステロールに対して有効な成分が数多く含まれています。また、納豆には、コレステロール対策にEPAやDHAと並ぶ有効成分、ナットウキナーゼが含まれています。
ビタミンC、ビタミンEなど抗酸化作用の強い栄養素
LDLコレステロールは増えすぎると血管壁にたまり、活性酸素の影響で酸化、そのまま蓄積していくと動脈硬化が進行してしまいます。この酸化を防ぐため、厚生労働省では「ビタミンCやビタミンE、β-カロテン、ポリフェノールなど抗酸化作用の強い栄養素を多く含む食品をとるようにすることが効果的」としています。※3
食事から摂るのであれば、ビタミン類を多く含む緑黄色野菜やみかんなど柑橘類、りんごなどを意識して食べるようにしましょう。
ヨーグルト(乳酸菌)
生クリームやバターといった乳製品は動物性脂肪が豊富なため、基本的には摂りすぎに注意するものではありますが、ヨーグルトは少し違ってきます。ヨーグルトに含まれる乳酸菌には色々な働きがありますが、そのなかのひとつにコレステロールを吸着して体外に排出する働きがあります。
不飽和脂肪酸
ナッツ類にはオレイン酸など良質の不飽和脂肪酸が多く含まれています。またビタミンEやミネラル、ポリフェノールなどの抗酸化物質も豊富です。とくにくるみは、ナッツ類のなかでも群を抜いて青魚にも多く含まれるオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。
またオリーブオイルにはオレイン酸が、えごま油にはα-リノレン酸が含まれています。
※1~3 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 「LDLコレステロール」
コレステロールを下げるトクホの飲み物
一般的にコレステロールを下げる効果が期待できると言われている飲み物はいくつかあります。しかしそのなかでも、特定の保健の機能が期待できることを表示した食品、いわゆる「トクホ」で血中のコレステロールに対する働きのあるものをいくつか紹介します。
社名 | 名称 | 有効成分 | 効果 |
大正製薬 | 大麦若葉青汁キトサン | キトサン | コレステロールの吸収を抑える |
サンスター | 緑でサラナ | SMCS | コレステロール低下作用 |
マルサンアイ | 国産大豆の調製豆乳 | 大豆たんぱく質 | コレステロールを低下させる |
キッコーマン | 特濃調製豆乳 | 大豆たんぱく質 | 血清コレステロールを低下させる働き |
伊藤園 | 2つの働きカテキン緑茶 | ガレート型カテキン | ①血中コレステロールを減らす②脂肪の吸収を抑える |
伊藤園 | 2つの働きカテキンジャスミン茶 | ガレート型カテキン | 体脂肪・コレステロールが気になる方に |
伊藤園 | 2つの働きカテキン烏龍茶 | ガレート型カテキン | 体脂肪・コレステロールが気になる方に |
ただし、いくらトクホの飲料を飲んでいるからといってこれらは薬ではありませんし、暴飲暴食などしてしまっては意味がありません。生活習慣の改善とともにサポートとしてトクホを利用していく、という使い方がいいでしょう。
また動脈硬化性疾患予防ガイドラインによるとそのほかの飲み物では
- 緑茶
- コーヒー
- 烏龍茶
などの茶類も冠動脈疾患の発症抑制と関連していて、特に緑茶摂取の増加と冠動脈疾患による死亡率の低下との関係が日本人で報告されているようです。
コレステロールを下げるサプリの成分
普段の食生活で摂取が難しい場合にはサプリメントの併用がおすすめです。
例えば青魚に含まれるEPA・DHAは、コレステロールを下げる成分として代表的な成分ですが、その効果的な摂り方は刺身での摂取です。しかし、毎日毎日お刺身を食べるというのは中々難しいですよね。焼き魚や煮魚にするとしても、魚を毎日摂取するのが難しいという方は多いのではないでしょうか。
厚生労働省では、このEPAとDHAを1日に1g以上摂取することが望ましいとしています。しかし、実際のところの摂取量はどの年代でも1gに達していません。
そのためEPA・DHAのサプリメントを選ぶ際には、この足りない部分を補える400~600mg程度のものを選ぶといいでしょう。サプリメントはあくまでも栄養補給、サポートですので、普段の食生活でもなるべく意識的な摂取をこころがけましょう。
コレステロールを下げる運動
コレステロール高値の原因のひとつに運動不足による肥満があります。
LDLコレステロールの高値が一つの診断基準となっている脂質異常症の治療としてまずはじめに行うのは、食事療法と運動療法を重点を置いた生活習慣の改善です。
厚生労働省では以下のような運動種目・時間・頻度・強度の運動療法を推奨しています。
運動種目
ウォーキング(速歩)、ジョギング、水泳、自転車、社交ダンスなどの有酸素運動
運動時間と頻度
運動はできれば毎日、1日30-60分間、あるいは1週間で合計180分以上の運動
運動強度
最大酸素摂取量の50%程度、中等度「ややきつい」と感じる程度であり、心拍数が安静時の1.5倍程度(100-120拍/分)の運動強度
ただし、運動を実施する上での注意点として
「準備・整理運動を十分に行うこと、メディカルチェックを受けて狭心症や心筋梗塞などの心血管合併症の有無を確認して運動療法の可否を確認した後に、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて運動量を設定する必要があります。」
としています。
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「脂質異常症を改善するための運動」
コレステロールを下げる薬
食事療法や運動療法に重点を置いた生活習慣改善の次のステップが薬物療法です。しかし、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患ガイドライン」ではLDLコレステロールが180mg/dl以上の場合は薬物治療を考慮する、とされています。
薬物療法になったら医師の診断に従ってしっかり続けましょう。
気をつけたいのは薬を飲んでいるからといって食事や運動に気をつけなくてもいい、と考えてしまうことです。薬物療法はたいていの場合、食事療法や運動療法と並行して行うよう指導されると思います。
薬に頼りすぎることなく、根気よく食事や運動など生活習慣の改善を行っていきましょう。